演じられていて特に印象に残ったセリフやシーンがありましたらお教えください。
増田:
ご購入頂いて、特典トークCDを聴いて頂けたら分かると思うんですけど、その中で羽多野さんが、「男同士の汗ほとばしる部分を描いてくださっている」って仰っていたじゃないですか。やっぱり物語のスタート地点から作品のゴールとして、防衛戦という一つの頂きに立つところまでボクシング人生もしっかりと描かれていたので、恋愛模様として楽しいだけではなくて、僕が黒後岳を演じる上での達成感じゃないですけど、一つのゴールに立てて感極まれたというか。道半ばで終わるわけではなく、「ここまで来たんだぜ。で、もういっちょいってやろうぜ!」という気持ちのいい終わり方をしていたので、作品全体を通して、男としても嬉しいシーンでしたね。
ラスト、やっぱり四年も経つとあんまり変わっていないようで、でも変わっているものがあったりとか。動揺したりするところはたぶん岳の根っこの部分だし変わらないんですけど、チャンピオンとしての風格みたいな、「いや、俺だってもう防衛戦三度目っすよ」っていうのはやっぱり人間ありますから。リングに立つことにもたぶん慣れてきてるじゃないですか。だから、その前の一弥さんの浮き足立ち方、好きでしたけどね(笑)
増田:
本人はちょっと黙っててくれっていう状況もあったりする(笑)
増田:
でもそれは、一弥さんも実際リングの上に立ってた人間だし。
羽多野:
うんうん。それでリングを自らが降りて、降りることで岳に自分の人生を託すというか、自分の夢もぜんぶ託す、それを認めているっていう部分っていうのが色んなセリフの中に内包されていて。
彼は岳に対して思っていることっていうのを、とても素直に言葉や行動の中に内包しているんだけども、より素直に表しているのはやっぱりモノローグなのかなって思って、大事に丁寧に演じさせて頂きましたね。それはすごく印象に残っています。
あと、突然橋の上で叫ぶシーンも印象に残ってますね(笑) 一瞬、原作の絵を忘れてしまってですね、「うおおおお」の勢いで「とったるー!」みたいな芝居になっちゃって、監督から「ちょっと羽多野さん、そんな漫画じゃないです」みたいな(笑)
増田:
気持ちは! 気持ちはそうなんですけど、作品的には(笑)
羽多野:
「次週に続く!」みたいになっちゃって、そうじゃないんだよなって(笑)
増田:
そしたら僕もボクシングシーンが変わってきますから。「食らえー!」シュバババババババー!みたいな(笑)
羽多野:
「すげー、早くて見えないぞ! ジャブが見えない!」みたいな(笑)
増田:
「うおおおおおお!」って五メートルくらい上を仰け反りながら飛ぶ描写をやらなくちゃいけないです(笑)
羽多野:
いやー、安元くんに飛んで欲しいな。それをもろに食らって「うおおおおおお!」って飛んで(笑)
増田:
「ドサ!」って。面白いでしょうけども(笑)
羽多野:
演じ方一つで同じセリフでもこんなに雰囲気が変わるんだなって思いますし、そのセリフの文字情報だけでは窺えないくらい深いキャラクターとしての語り方だったりが、本当に原作を読むと「うおー、なるほど。こういう表情でこのセリフを言ってたんだなー」ってまた発見がたくさんあって、原作を読ませて頂きながら音声収録できたっていうのはすごく嬉しく思います。
なので、原作と一緒に楽しんで頂くという楽しみ方もあるんじゃないかなーと思いますね。
作中で岳が福引でマグカップを引き当てていますが、最近何かに当選したり、ラッキーな出来事などがありましたら教えてください。
羽多野:
昨日の夜、推しのガチャが出て(笑) 普段あんまりアプリゲームのガチャとかやらないんですけど。
増田:
お尻のゲーム? え、ちょっと待ってください…どういうことですか?(笑)
羽多野:
お尻じゃないよ。そういうイヤらしい話じゃなくて(笑) 僕、仕事で関わったゲームを一応全部プレイしてるんですけど、その中でたまたま最近リリースされたアプリゲームがあって、一役演じさせて頂いているということもあって、その役が出ないかなと思って。あれ不思議なもんで自分のキャラって出ないんですよね! だーますと一緒にやってるゲームとかもけっこうあるじゃないですか。いわゆる課金をしてガチャを回しても、なっかなか自分のカードは出ないんですよ。逆に言うと、同じゲームのだーますのカードは、よーく出るんだよね(笑)
増田:
いやいや、それはそれで悲しいですけどね。割合が高いのかなって思っちゃって(笑)
羽多野:
いや、でも本当に物欲センサーなんでしょうね、なかなか出なくて出なくて、リリースから何日か経って、ようやくね。「あと一回だけやって出なかったら今日はもう寝よう」みたいな感じで引いたら、欲しかったイラストがボン!て出て。あーれは嬉しいもんだね!
増田:
あー、推し!! やっっっっっと! 僕、話の頭からお尻で聞いちゃってたから、ずっと結びつかないまんま(笑)
羽多野:
何で! 「SSR! お尻!!」っておかしいでしょ? そんなカード見たことないよ(笑)
増田:
や、羽多野さん、某アイドル好きじゃないですか。だからそっち系なのかなって。
羽多野:
そっち系だとしても、SSRでお尻とかないから!(笑)
増田:
たまたま強調されたようなあれかなって(笑) やー、良かった! 気持ちいい! 推しですね!!
羽多野:
推し推し! イチオシの推し!(笑) ゲームのガチャとかよくできてるんですわ、あれ。出たカードをさ、育てたりもするじゃない。
増田:
しますね。絵も変わるし、声もどんどん増えるし。
羽多野:
いやー、あの世界は無限だよね。僕のキャラのカードも出たし、続けてまた楽しんでやっていこうかなって思います。いやー、でもラッキーだなって思いました。
羽多野:
だーますは? 最近起きたラッキーなことある?
羽多野:
おー!!! いいなあ!! おめでとうございます!(拍手)
:
―――おめでとうございます。でもそれはラッキーではなく、実力です!
増田:
いやいや、本当に。羽多野さんだったら重々承知だと思いますけど、実力というよりも本当にラッキーですよね。
羽多野:
いや、やめて! 僕に責任を押し付けるの!(笑) まあでもタイミングとご縁も大事だよね。
増田:
そうですね。うまかったら受かるというわけじゃないですからね。
羽多野:
まあ一つだけではないよね、要因というのはね。でもちゃんとそれを引き寄せてきたのは自分だから、すばらしいことですよ!
増田:
最近の嬉しい当たった出来事はそれですかね。
羽多野:
うーわー、いいな。いちばんいいことだよ。声優人生ここにありですよ。
増田:
事務所からの連絡で毎週来てほしいやつですよね。
羽多野:
いや、これ本当に冗談じゃなくて。色んな先輩方が仰ってますけど、落ち続けることも仕事の内なんてことを言われるくらい、一役オーディションで決まるっていうのって本っっ当にすごいことだと思いますよ。いや、すごいわ。尊敬します!
増田:
ありがとうございます! あざすあざす、あざっす!(笑) もう年に何回あるか、ない年もある。本当ですよ、これ。
羽多野:
本当なんですよ!
オーディションを受けた役で決まるのなんて、なかなかないですよー。
逆にいうと先輩方はもうご指名で、「最初からこの方にやって欲しい」っていう風に決まることが多いので、オーディションをそもそもやってないっていう方もいらっしゃいますし。あと、オーディションが苦手っていう先輩もけっこういるんですよ(笑)
羽多野:
「俺、オーディション苦手なんだよ。決まんないから」って。
羽多野:
そうなんですって。だからその先輩がいうには、「やっぱオーディション用の工夫があるのかな」みたいなことをね。
羽多野:
同じ役を下手すると百人くらいが受けますから。それをスタッフさんがセリフを聴いて、「この人だ!」ってたった一人に決めるって相当大変なことではあるけど、決めて頂く工夫みたいなのがもしかしたらあるのかもしれないですよね。例えば、はがき職人の方が自分のはがきが選ばれるように蛍光ペンでラインを引くみたいな、そういうたくさんの中から選んで頂くために何かしらの工夫があるのかもしれない。
増田:
大事ですよ。選ぶ側も人ですからね。僕、以前先輩からオーディションのコツを聞いたことあるんですよ。
増田:
台本で一頁目から四頁目があったら、四頁目から読めって。
羽多野:
ええええぇぇ!!?? すごーい! 面白い!(笑)
増田:
そしたら覚えてもらえるからと。だけど僕は人生で一度もやったことがないです。
羽多野:
めちゃくちゃ勇気いるよね、それ。「あれ、音飛んでんのかな」ってなりそう(笑)
増田:
前作のCDが発売されるよりも前に聞いた話なので二十三〜四歳くらいのときに、同じ作品のオーディションにいらっしゃった先輩にご挨拶したら、「おー、元気か。これな、四頁目から読みなよ」「えっ、え、え、え。何でですか!?」「覚えがいいからだよ」って。
羽多野:
あはははははは(笑) 先輩方、本当に面白いよね。
増田:
もう本当に若手をいい意味で翻弄して!(笑) でも、あながち間違いじゃないなとも思いますよね。だって悪いことをせずに目立つってなるんだったら、これほど武器なものはないですよね。演技の内容が拮抗した2人がいたら、「あいつ、四頁目から読んだぞ」というオプションで、「何か変なシーンとかやらせたら面白いことが起こるんじゃないか」とかで、選ばれるご縁があるかもしれませんよね。
羽多野:
あります、あります。何がきっかけになるかって、蓋を開けてみないと本当に分からなくて。僕もデビューしたばかりのときに、テープオーディションで一役頂いて。たまたまそのデモテープを事務所の会議室みたいなところでマネージャーさんが録ってくれたんですよ。そしたら僕の声だけ、お風呂場みたいなエコーが掛かってて(笑)
羽多野:
そう! みんな、ちゃんとした環境で、それこそこういうスタジオとかで録ってるから、「〜事務所の、〜です」とかって普通に録れてるんだけど、僕だけ、「エイティーワン、エイティーワン、エイティーワン、プロデュース、プロデュース、プロデュース。羽多野渉です、です、です」みたいな(笑)
羽多野:
何かじわじわ面白くなってきちゃって。監督さんやスタッフさんが聴いてても、「ちょっと面白いね、これ」みたいな感じで呼ばれて。
羽多野:
、あとから監督さんに聞いたんですけど、「面白いから、この子でいいんじゃない」ってことで、決めてくれたみたいで。二十代前半のときでしたけど嬉しかったですね。きっかけは何であれネタにしてくれて、それでお芝居の方もしっかり聴いてくださって。すごい厳しい現場だったけども、ディレクターさんや監督さんや、あと先輩方が現場で育ててくださったのが嬉しかったですね。
増田:
それだけ珍しいことだし、嬉しいことだけどなかなかないことなので、ちゃんと素直に喜んでいい当たりだったなって思います。
羽多野:
うん、すごい! だーます、おめでとうございます!(拍手)
作中でタイトルマッチのご褒美にタイ旅行をリクエストしていましたが、ご自身にとってのご褒美などがありましたら教えてください。
増田:
ご褒美があるってことは試練というか目標があったわけじゃないですか。これくらいの頑張りだったらこれくらいのって、それぞれ釣り合ったご褒美が僕には存在するんですけど、どのレベルの目標にしますか?
増田:
オーディションに受かってご褒美したことないな。むしろ身が引き締まる思いです、頑張らなきゃって(笑)
増田:
タイトルマッチって大きなステージじゃないですか。やっぱり僕らだったら、一〜二ヶ月かけて準備したイベントステージとかそういうお仕事が終わったときのご褒美ですかね。
増田:
はい。やっぱりボクサーもそうだと思うんですけど、高いステージにいくときって技術だけではなくて、ポテンシャル…体の調子も整えないといけないので、僕も何週間か前からちょっとずつ調整を入れて辿り着く為に、ジャンキーなものは我慢します。本番が終わったその流れでファストフードを食べる事が、もしかしたら僕にとってのご褒美かもしれないです。
増田:
それはもう悪の権化、カリッカリのポテトですね。
増田:
いい要素ないじゃないですか。褒められる部分はうまい!しかないすからね。
増田:
うまい以外はもう脂質、塩分、糖質の人間を怠惰へと導く三要素! ただ貴様はうまいっていう(笑)
増田:
タララ、タララ〜の音と共に揚がるあれですよ。やつをLサイズ二個頼んで、それをダラッダラ食べるわけですよ。もちろん、ナゲットもバーガーもあるし、シェイクもあるし、何だったらプチパンケーキから、何でシェイク頼んだのにデザートもあるのっていう(笑)
羽多野:
フルコースじゃん〜。フルコースで楽しむ人なかなかいないよ?
羽多野:
本当!? 俺、たぶん胃が受け付けないや、油を(笑)
増田:
氷でどんどん薄くなっていく炭酸のジュースがめちゃくちゃうまいんですよ。体を整えて整えて、「終わったー!」ってなったら、お酒を楽しむ人もいると思うんですけど、僕は家に帰って一人でジャンキーなものを、「あ〜、頑張った〜」って。
羽多野:
そっかー。食べ物、いいかもしれないですね。今はこういうご時世でもありますから、なかなか難しいことなんですけども、僕は旅行ですね。
羽多野:
毎回違うところに行くっていうのも刺激的で面白いんですけども、一軒お気に入りのお宿があって、そこのすごくオシャレなところが暖炉がついてるとこなんですよ。暖炉に薪をくべてって、何か子供の頃から憧れてて。たしかテレビもなかったと思うんですよね、そこは。携帯も電源を切って、もうとにかく本当に何もしないで、暖炉のパチパチパチパチっていう火を一時間でも二時間でも眺められるんですよ。その時間がもう最高のご褒美ですね。
増田:
あ〜、大人ですね〜。精神的に研ぎ澄ませてるんですね、その目標に向かってる最中。
羽多野:
そう。全部が終わった後、こうゆったりとした時間の流れで何も考えないでいられるっていう贅沢。最近、移動できないから編み出したんですけど、動画配信の画質って今めちゃめちゃ上がってるんですよね、4Kとか8Kとか。
羽多野:
それで、ひたすら燃える火を眺める動画とかあるんですよ、二時間くらい。
羽多野:
ああいうのすごいなと思って、夜に部屋を真っ暗にして三十分くらいずっと眺めてます。僕、音響も好きなんですけど、スピーカーとかアンプとかを置いてると音がリアルなんですよね、パチパチって(笑) それをぼーっと見て寝るとぐっすり寝れるんですよ。
増田:
火はいいって言いますからね。いやー、大人な贅沢。何かいいですね。年齢差があって(笑)
増田:
やっぱり、まだまだ僕は胃袋を満たして(笑)
増田:
おじいちゃんじゃないです。大人、大人(笑)
羽多野:
あははは(笑) いやー、焚き火動画いいですね。世界の色んな場所でやってて、それがすごいんですよ。ものすごい自然豊かな場所でやってたりとか、奥に滝みたいなのがある場所だったりとか。
羽多野:
山! ああ、山欲しいな〜。うち、実家が長野県じゃないですか。小学生の頃、同じ村の子たちが「俺ん家の山はねー」とか、「うちの山で採れたきのこがねー」とか、「今朝、うちの山に熊が出てさ」とか、うちの山話がすごかったの。でも羽多野家は山を持ってなくて、めちゃくちゃ悔しかったですね。畑はありますけど。
羽多野:
大変ですけどねー。ちょっと憧れますね、山は(笑)