東京漫画社レコード

クロ役の阿部です。非常に心情というのか、心の機微に重きをおいた作品だなというのが台本を読んで伝わってきました。その中で、クロがちょっと表情変化に乏しいというか脱力系のキャラで、でもその割にはけっこう色々な感情表現とかを出すので、出せるラインが狭い中でそういったものをどう強調していったらいいのか、うまく出せるといいなと思いながら、手探り状態で演じました。

そうですね。付き合った後の方が距離感が近くなって、感情を出す機会は増えるんですけど、やっぱり出せる幅というか、そういうのは音にしても音量にしても差はないから、その辺をどうしていこうかなと模索しながら演じました。

赤松はですね、もちろん広島の方言があったので、（同郷の）利根さんと一緒に色々と模索しながら、先生にせっかく作って頂いた広島弁なので、どこまで生かした上で、作品の風合いが変わらないように、その中でも僕らの近くの広島弁の形にちょっとずつ変えさせて頂いたりとか、そういったところに苦戦しましたね。あとは、赤松自身けっこう大雑把に自分の思いとかをそのまま相手に伝えるようなキャラだったので、いかんせん僕が相手に伝えるときに、ぶつけようぶつけようとしてしまって声が大きくなったり、途端にシリアスじみた感じで話しかけたりしてしまったので、もうちょっとあっけらかんとさせたり、周りから見たときにこいつ何考えてるんだろうなっていう赤松を演じていくのが、とても苦戦しましたね。

あんなに丸くないですね。最近は、うちの母とかと電話をしてるときくらいにしか方言が出てこないので。地元に帰ることもあまりないですし、帰ったからと言って地元で友達に会うこともほぼないので（笑）　考えるとけっこうドギツく聞こえますね。うちの母と電話してるとついついこう、「黙れ」とかね（笑）

喧嘩している風に聞こえる方言とか、やっぱりあるもんね。

まぁ、喧嘩してるんですけどね。

してんのかい！（笑）

「わしは言うとるじゃろうが、それをよー。何でわかってくれんのんかのう」とか。

喧嘩してんじゃん、普通に。

喧嘩してるんですよ。すぐに口出ししてくるんで。

じゃあ、しょうがないな（笑）

俺ありますよ。豚骨ラーメンが好き。

豚骨好き？

大好きです。一番です。

一番かー。俺、みそなんだよね。

みそかー。

豚骨もねー、元々そんなに得意じゃなかったなぁ。あっさり系の豚骨ならいけるんだけど。たまに本格的なやつってさ、獣の匂いがするじゃん。

ギトギト系のこってり系なやつですね。

そう、あれとかだとキツイなと思って。

うんうん。

そういうのけっこう都内でも増えてきてるからさー。

多いですね。豚骨醤油とかは横浜系はめちゃくちゃ濃いですからね。

背油チャッチャ系っていうの？

ああ、はい。塩分背油チャッチャ系とか、あれはしょっぱいですよね。

塩と油！　みたいな感じだから、ちょっとキツくって。

ごはんがないと食えない。

うん。だからみそとか塩がいいなって。平和で（笑）　クロと似てる部分ねー。何かなぁ。けっこうクロってクールだと思うんですよね。自分のことを俯瞰で見てたりするところとか。クールというか何だろうな、ちょっと冷めている部分は似てるかなって思いますね。

冷めてるんですか？

たぶん。冷めてるってたまに人に言われる。

え、何で？

好きなことはすごく好きらしいんだけど、それ以外のどうでもいいって思ってることは、途端に冷めるよねって言われる。

俺、好きなところとかが被ってるのが多い気がするんですよ、阿部さんと。だから、冷めてるように見えないのかもしれない。

あぁ、そうだね。たぶん、そうだ。

ゲームやったりするの好きじゃないですか。

うん好き。超好き。

俺も大好きなんで。ゲームに熱中していれば、すごい熱い人だなって。

俺もスポーツ観戦とか逆にどうでもいいと思ってるからさ（笑）

大体そうですよね。そういう落差が激しいってところがクロに似てるんですかね。

世がワールドカップとかで周りが盛り上がってるときも、ふーんみたいな。そういうところは、クロと似てるような気はちょっとしています。似ていない点は、もっと子供かなー、俺。って思いますね。

何かそんな気はしますね。まぁ、そういうクールなところがそう見えるのかもしれませんけど。でも、「海」って言われてテンションが上がったのには共感できました。俺も海が好きなんで。

俺も似てないところ１個あります。天パじゃない！（笑）　ごく毛のストレートなんで。え、ごく毛？　剛毛？

ちょっと、ごく毛って何!?（笑）

直毛、直毛。直毛のストレートなんで！（笑）

俺、はんてんマーンだな。はんてんマーン！　なんだこれって思ったけど。

はんてん着てるから、はんてんマンって。

や、そう。そうなんだけどさ（笑）　なかなか出てこないよ。はんてんマンって。言ったことないよ、俺の人生の中で。

僕は広島弁でけっこうツッコんだりするのが楽しかったです。これがって言うよりは、「じゃかーしいのう」とか全体的に広島弁を使わせてもらえて楽しかったっていう印象ですね。

俺はたばこが吸えない人なんですけど、たばこを吸ってるシーンがあって。確かに大学生のとき喫煙所みたいなところにたむろってる人がいて、こんな感じだったなぁ、ダルそうに吸ってたなって思って。ちょっと懐かしかったですね。

大学って自分の教室とか机がないから意外と所在がないんですよね。２年生のときにサークルに入ったんですけど、部室っていう場所ができて、それで居場所ができた感じでしたね。部室でダべったりとか、けっこうそこから学生らしい馬鹿なことをしましたね。深夜に飯食って、そのまま海に行くとか。どっかに肝試しに行くとか、そういうことをいっぱいしたんで。学業じゃないことの方が重要だったな、人生的には。と今になっても思いますね。

声優の専門学校に行っていて、僕も部活っぽいものに入ったんですけど、通常の授業が１限から５限まであって、部活に入ってる人は６～７限目に部活動の時間があるんです。そんな感じで一日中演技とか歌とかダンスの授業を入れまくっていたのですが、たまに空きがあったときにその時間を使ってゲームセンターまで走って行ってギリギリまで遊んで、授業に間に合うように走って学校に戻るってことをずっとしてました。

ゲームセンター、いいねー（笑）

２ｋｍくらいですかね。

２ｋｍ!?　ボチボチあるねー。

ほぼほぼ毎日行ってましたね。２～３ｋｍをずっと往復してました。

なるほど。

友達はそこまで授業を入れてなくて、ゲーセンにずっといるんですよ。僕の授業の空いたときに、「いまいる？」って聞いて、「じゃあ、いま行く」って言って皆とゲーセンしてってのを続けてました。それが唯一の青春でしたね。楽しかったなぁ。

どこっていうか全体的な気がしますね。行間みたいなところでキャラクターの心が動いてたりってシーンがけっこうあるので、セリフもそうなんですけど、ちょっとした間だったり、セリフに入るまでの時間だったりとか、そういう描写を２回目以降に注意して聴いて頂けると、新たな発見があるのかなと思います。

収録時には感じられなかった聴きどころがきっとあるはずなんですよ。最初の夜のあとにはこんなことがあったとか、あのシーンではきっと僕らの収録ではなかった音が実際のCDにはSE（効果音）でつくと思うので（笑）　収録で感じた楽しさの何倍もの聴きどころがあると思うので。それは監督たちの配慮による部分が大きいんですけど、そういうところが聴きところになると思います。

テンポ的に大変だったのは静って呼ばれる直前のあそことか。

あぁ！

きっとどういった関係性でも、下の名前で呼ばれたりするのは恥ずかしいし、かつ、自分の性別っぽくない名前だと特に。赤松はたぶん、紹介のときに、「どうも赤松です」って名前まで言わずに止まると思うんですよ。下の名前が可愛いってよく言われるから、言わないんですけど。そういった、言ってほしくないけど言ってほしい。言ってほしいけど言われたくない。あー、言っちゃった。でも言われると何か良いなーって。色々な感情が織り交ぜになって、スイッチが入っちゃうあのシーンが聴きどころかなと思います。

非常に人の心の機微と葛藤とに富んだ作品になったのではないかと個人的には思っておりますので、二回、三回と聴いて頂けると、新たな発見があると思うのでぜひ何度も聴いて頂きたいのと、それから原作コミックスには謎の先輩のお話も収録されていますので、そっちもいつか音声化できたらいいなと思っております。

BL作品の中でも、読んだり聴いたりするのにわりと入口になるというか、ライトな気持ちで購入できる作品なのではないかなと。かと思いきや、さっき阿部さんがおっしゃったように、精神描写の中で、しっかりと何度も何度も聴いていると、ここってこういう風に思っているのかなぁとか色々と考察もでき、浅くも楽しめますし、深くも楽しめる作品になっているかと思いますので、そういった作品（BL）が好きな人も、そういった作品にまだ興味を持ったばかりの人もですね、ぜひとも「赤松とクロ」をご購入頂いてその楽しさに浸って頂ければと思います。