演じられたキャラクターへの印象やご感想をお教えください。
斉藤:
本当に背負わされすぎですよね。作者という神にどんだけ十字架を背負わされているのかみたいな(笑) 15歳のときの時雨との出会いによって、ある種、一度元々壊れていたというか、凝り固まったものが解れてきたかと思いきや、またね。本当に酷なことですよ。本当にちょっとね、先生には面と向かっては言えませんが、酷なことをなさる方だなっていう…(笑)
八代:
(笑っている先生をチラッと見つつ)…大丈夫です。続けてください(笑)
斉藤:
元々、シロは言葉に感情を表さないタイプの人だと思うんですけど、特にドラマCDは表情が見えないので、その分、どういう風に引きだそうかと思っていたんですけど、演じていく中で意外とダイレクトにシロの気持ちが伝わってきたので、本当はもう一回人を信じたいんだなってところからベースに組み立てていけました。もう一度人を信じるっていう、何だかすごく当たり前といえば当たり前なんだけど、ものすごく大事なことを教えてくれる出会いに巡り合えて、本当に良かったなっていう。あとやっぱり、日常の顔がちょこちょことしか見えなかったんで、それは今後補完して頂きたいなという感じですかね。意外とどうなんですか? 意外と無能? 意外と有能??
斉藤:
彼の人生を声の担当者として表現させて貰うっていうのが、本当に気持ち的にはすごく辛くもあったのですが、同時にすごく僕自身も救われたなという感じでした。
八代:
まず虎を演じるにあたって読ませて頂いた第一印象として、虎という人間は優しいなと。本当に本当に温かい人間だなと思いました。おまえ騙されてるんじゃないかという疑惑もありましたけど(笑)
斉藤:
まぁ、当然そうだよね。ちょっとその風潮あるよね。騙される方が悪いみたいな風潮があるけど、本当にその通りだよね。
八代:
そうなんですよ。だから虎君は何も悪くないです。出会ったものに対して、すごく純粋で素直に接することが出来る青年ですね。僕がすごくわかるなというか良いなと思ったのが、優しさも持っているし、向き合ったときにどう思うかっていうのも本人の中であるんですけど、23歳という年齢と彼の性格的に、器用に伝えたりとか解決するっていう術はちゃんと持ち合わせてはいなかったりして、シロとタイプは違えども不器用同士の絡みというかやり取りが、ほほえましくもあり切なくもありで、自分もそこは大切にしながら演じさせて頂ければなと思いながら、キャラクターを見ていました。
斉藤:
素敵でしたね。作中で、時雨と子供シロが「俺はずっとこれしか出来ないんでしょうか。一生こうやって……」「そんなわけねぇだろ」っていうシーンが一番ぐっときたんですけど。そのあとの悲劇というか。どういうことが出てくるかって予想はしてたんですけど…。僕の感覚なんですけど、森川さん、ちょっとウェット目に寄せてくれたのかなっていう。僕、出しすぎたかなと思ったんですけど、それをふわっと包み込むように、一瞬心を揺らがせてくれたのかなっていうのがうれしかったなって。夢の世界でもう一度話したときの最後のセリフがすごく素敵で、あれもすごくバシッとはまったなぁなんて思ってます。
斉藤:
野島さんはやっぱちょっとエロかったですよね。
斉藤:
野島兄さんの声ってイヤホンとかで聴くとめっちゃ響く声っていうか、現場だとそんな声を張ってるわけでもないのに、すげー乗ってるんだよね、マイクに。その振動が本当にエロくてね。早く完成品を聴いてね、私も楽しみたい。
斉藤:
僕は野島兄さんの声、大好きなんで。なので、今後ですね。『MODS』ではご一緒出来ないかもしれないですけど、今後は別のね、『SADS』とかでね。
斉藤:
すみません…(笑) 特典トークCDでも話したんですけど、(BLCDの相手役で)初めて自分よりも年下で、後輩の人とやらせて頂いて、僕自身も全然BLCD作品への経験も浅いですし、他の芝居もそうですけど。結局すべてがその限りじゃないかもしれないけど、ただ同性が性行為をすればそれで成立するのかっていったらまったくそんなことはない世界じゃないですか、結局。そこに至るまでのプロセスが特に今回は複雑で、拒否して踏み込んで諦めてみたいな、そのやり取りを一緒にやれたのが、拓ちゃんですごく良かったなというか。この間一緒に飲んだときも、マジで僕がだんだん酔っぱらってきて、5分に1回くらい月曜はよろしくねってずっと言ってたんですけど。
八代:
本当にすごかったんですよ。僕も最初は、よろしくお願いします。あの作品がこうでああでっていう話をしていたんですけど。本当に5分おきだから…。僕以外にも人がいたんで…また壮馬さん、同じ話してるよって…
斉藤:
お前、月曜の話しをしにきたのかみたいな感じになっちゃったからね。
八代:
僕は微笑ましいというか、うれしく思ってたんですけど。
斉藤:
一緒に飲んでた人が、懐疑的な顔してたよね。まーたその話かよみたいな。
斉藤:
や、ちょっとあそこさー、くそ泣いたよねみたいなことを言える相手ですごく良かったっていうか。逆に、ほぼ初めましてだったらさ、「あっ、じゃ、あの、もう一突きして頂いたら、もう一喘ぎするんで…」
斉藤:
「やりやすいようにやって頂いて大丈夫なんで」
八代:
「いやいや、そんなことない、そんなことないです」
斉藤:
みたいな感じになってたんで、すごく本当にありがたかったです。阿吽だったよね。
八代:
僕はさっきも言ったんですけど、時雨さん役の森川さんのお芝居がとても素敵で、全てを包み込んでくれるというか…後ろで勝手に聞き惚れてしまいました。また個人的にも、春さん役の野島さんと話すときと、壮馬さんのシロと話すときは、テンポや呼吸などがいつもと違い、それがお芝居に現れているのではないかと思います。
斉藤:
確かにトーンとかもちょっと違ってたもんね。
八代:
僕としては挑戦的な役柄だったのですが、壮馬さんが作ってくださる温度感やテンポ感に熱さを感じましたし、秘めた気持ちが心地良かったです。逆に野島さんとはまた違った心地よさがあるんですよね。
八代:
すごく良い意味で変えてくださって、その違いが何だか勝手に心地良くて、お三方、そして多くの皆さんに本当に支えられながら今日の収録を終えられました。
斉藤:
けっこうね、男1とか男2とか、シロをいじめてくださった皆さんもなかなか個性的で。小野塚さんとかすごかったよね。
斉藤:
そうそう。で、クラブ行って、櫻井トオルさんとさ、殴り合ったでしょ? 男4役ね。
斉藤:
絶対強いよね! 身軽だったよね。あっ、こいつ戦い慣れしてるみたいな。
八代:
こっちは抗い感があるのに、かなりの手練れなんですよ。
斉藤:
そういう細部にまで気を遣って演じているので、そちらもぜひ聴いて欲しいですね。
演じられていて特に印象に残ったセリフやシーンがありましたらお教えください。
斉藤:
さっきから話している通り、僕はやっぱり時雨とのところが原作を読んだときは一番ぐっときたんですけど、実際演じてみて確かにそこももちろんすごくぐっときたんですけど、一番ぐっときたのは、虎がぎゅって抱きしめて、「…シロさん、もうこの仕事やめましょう」って言ったので、あれで気持ちがすごく動いて、何かすげー良いの出たなって思った。
斉藤:
もちろん役の気持ちの流れに沿っていつも役を演じているわけなんですけど、特にその中でももう一段深く気持ちが引っ張られたので、それがすごくありがとうって感じでした。
八代:
シロの気持ちを受けて、あのお芝居が出来たと思います。本当に壮馬さんには感謝しかないです。
八代:
ありすぎて…。虎とシロのシーンは挙げたらキリがないんですが、最初と最後がラジオのシーンという演出が大好きです。シロの思い出の曲が、関係性の違いで全然違って聴こえて、すごく僕は気に入っています。
キャラクターとの共通点がありましたらお教えください。
斉藤:
(笑) どっちかっていうと僕も、虎みたいな人がいてくれた方が楽だなって思うタイプですね。別にやってやれないことはないけど、より世話焼きみたいな人がいてくれたらねって。好きですね、そういう人が。わりとそういうところは似てるかなとは思いつつ。さっき拓ちゃんも特典トークCDで話してたけど、わりと僕も温和な家庭で育ってきたので、僕のリアルとしては、シロの人生にはそんなには寄り添えないかもしれないけど、似通っていない人生を歩んでいるっていうことで逆にシロに近付けていけたのかなと思います。あとは、年齢…
斉藤:
わりと普段から、この役と自分のどこが似ているかというのを、アプローチの方法として取らないので。彼がどうであるかが大事かなって思うんでね。ただ、僕は、真っ裸にパーカーだけ羽織ってソファーではちょっと寝ない…
八代:
やっぱりそこは似てないんですか? さすがにですか…
斉藤:
そうですね。なので、今度挑戦してみたいなって思います。暖かくなったら。
八代:
するんだ?(笑) 何で意気込んじゃったんだろうな…
斉藤:
本当? じゃあ、先にやってもらっても良い?
斉藤:
けっこうマジで似てますよ。本当にすげーぴったりだなって。
斉藤:
巻き込まれ体質というかね。最初のところですごい似てるなって思った。
斉藤:
そう。何だろうね、やっぱり自分でもある? 似てるっていうか。
八代:
ありますあります。自分で言うことじゃないかもしれないんですけど、物事に巻き込まれていくっていう体質と、何だかんだやっぱり優しいっていう(笑)
斉藤:
や、でもね。全然間違ってない。本当にわりと巻き込まれ体質だし、優しいし。まぁ、優しいから巻き込まれるのかもしれない。って、どうしたんだい?
八代:
自分で言ってて耐えられなくなっちゃった(笑)
八代:
や、言わせたみたいで、本当にすみません(笑) ここまで強そうな体格とかは似てないんですけど、内面からにじみ出るものはどことなく似てるのかな…とちょっとだけ思いました。
斉藤:
本当にこの質問はいつも心苦しいですよね。もちろん、ぜんぶじっくり聴いて頂きたいんですけれども。けっこう原作では絵で補填していた部分を、セリフで補填したりとかしていて、わりと一言があるだけで全然状況の理解が助かったりとかもするので、そういう微妙な音声と映像の違いっていうのを聴いて頂きたいですし。あと、やっぱり幾人にも幾人にも蹂躙される様をですね、一体どういう風に音になっているのか僕はまだわからないんですけど(笑) ダークでダウナーなドラマもあるし、ただ最後には雨が上がるように、日差しが少し照らしてくるみたいな。なので、全部です。
斉藤:
何カ所かは出して、最初と最後に全部っていう(笑)
八代:
魅力はたくさん語って頂いたんですが、一番個人的におすすめしたいのは、この作品を通しての、ダークと括って良いものかわからないですけど、独特な雰囲気がやっぱり僕はすごく大好きです。キャラクターが形作っている雰囲気や、デリヘルという業態が形作っている雰囲気など、色々な要素が合わさって出来た、この『MODS』にしかない雰囲気が魅力だなと思います。
斉藤:
確かに、ノリの軽いキャラとか全く出てこなかったもんね。
八代:
本当にそう。皆が皆、落ち着いてるとまで言ったら言い過ぎかもしれませんが。
斉藤:
4人共が基本ローなテンションで話すとか、あんまりないよね。
八代:
だから僕は、最初は(虎は)シロ達とは違って感情の動きが大きいキャラクターかと思っていました。
八代:
なのでその方向性で役作りをして収録に臨んだのですが、現場でスタッフさんとお話させて頂き、考えていた方向性と逆の形で演じてみると、その方がしっくりきました。
信虎はアニメの影響で土手からダイブをして顔にキズを負ってしまっていますが、子供の頃のヤンチャエピソードなどがありましたらお教えください。
八代:
僕が幼稚園くらいのときに、おじいちゃん家に遊びに行ったんですけど、子供が入れるくらいの車のオモチャで遊んでいたら、バターンって倒れちゃって、ちょうど倒れたところにブロックが置いてあって、それで切ってキズが残ってしまったんです。虎とほぼほぼ一緒なんですよ。
斉藤:
本当だ。でも良かったよね。目とかに当たらなくて。
八代:
本当に危なかったです! 子供とは思えないくらいな大声で泣いて…
斉藤:
痛い…。でも良かったね。より悪いところに当たらなくて。
八代:
ここで良かった。眉間を寄せたときに、ちょっと迫力が増すっていう。
斉藤:
確かにね…。っていうかさ、とりあえず俺たちは今、「確かに」っていうしかないじゃん?
斉藤:
やっぱりね、幼少期のケガのせいで、ちょっとね(笑)
斉藤:
実は、幼稚園くらいの頃まではけっこう活発な子供で。あんまり、めちゃくちゃ大けがっていうのはしたことがなかったんですけど、幼稚園の頃に飛行機の遊具から落ちて息が止まったりとかは。
八代:
息止まりすぎじゃないですか? 止まりがち?(笑)
斉藤:
止まりがちなんだよ。あとは、ちょうど15歳のとき、だから子供シロと同じくらいのときに、僕、高校を推薦で入って一般受験じゃなかったので、2月くらいには高校が決まってたんですよ。あるうららかな2月の日、ダメージデニム作りたいなって思ったのね。
斉藤:
やっぱり一回はそういうのあるじゃないですか? オリジナルのクラッシュデニム作るみたいなね。で、家の屋根に上って、やすりでジーンズを削ってたのね。
斉藤:
いや、当時、携帯は持ってたんだけど、スマホとかがないから、容易に検索とか出来なくて、とりあえず何かいけんだろうって思って。やってたら生地の埃が出るじゃないですか、その埃をめっちゃ吸い込んで、すげー咳が出るようになったなーと思ったんだけど、まぁ、埃吸い込んじゃったからなと思ってて。1週間くらい咳が止まらなくて、ある朝起きたら立てなくて。あれ?って思って熱測ったら39度くらいあって、インフルエンザかなって思ったら違くて。二回も検査したけど違いますってなって、大きい病院に行ったらこれマイコプラズマ肺炎ですねって言われて。
斉藤:
2週間入院したっていう、ヤンチャエピソード。
斉藤:
無能エピソードだよね、それはね。普通さ、わかるじゃん、何か。マスクするとかさ、色々あるわけじゃないですか、方法は。
八代:
無能エピソードだよね、それはね。普通さ、わかるじゃん、何か。マスクするとかさ、色々あるわけじゃないですか、方法は。
斉藤:
そうだよね。普通3日目くらいでやべーなって思うじゃん。
斉藤:
高校決まった解放感で、きっと頭がおかしくなってたんだよ。高校の入学式には間に合ったんだけど、中学最後のバレンタインデーは病室で。15歳だったんで小児病棟だったんですけど、先生が頭にぬいぐるみを巻いて「回診の時間だよ~」って感じで入ってきて、途端に「あっ、斉藤さん、どうですか?」って大人扱いしてくれて。先生が優しかった。そんな懐しい思い出がありました。